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キュレーション問題について(DeNA/WELQ他) - 永江一石氏の講演雑感 -

※注:前置きがかなり長いので、講演の感想だけ見たいという方はこちらをクリック

久々に書くネタが出来たので。

「Yahoo登録サイト」という単語、ご存知ですか?


昔のYahooは、サイトを作っただけでは存在が認知されず、サイト作成者から登録申請され、審査を通ったサイトだけがYahooに登録されるという仕組みになってました。

審査の敷居は意外と高く、単にトップページと適当なオリジナル記事を数本作ったくらいではYahooに登録されません。
それなりの質と量がないと審査に通りませんでした。

検索エンジンがYahoo一強だったWeb1.0時代、Yahooへの登録有無でサイト訪問者の桁が変わっていました。
また、当時からgoo(Googleとは別の、NTTレゾナント社の検索エンジン)などのロボット型検索エンジンもそれなりにWeb界隈では認識されてましたが、サイトの質に関係なく拾っていたため、「人の審査が入っている」Yahooの検索結果と比べると、どうしても検索結果のジャンク感はぬぐえませんでした。

逆に、Yahooに登録されることが、個人サイト制作者にとっては「ステータス」になっていました。
トップページで「当ホームページはYahooに登録されました」というフレーズを何十回と見た覚えがあります。

私が昔やってたサイトも、2か所Yahoo登録されてました。
個人HP本体と、そこから独立した某歌手ファンサイトの2つです。

当時のサイトは、情報提供やレビューを中心とした「情報系サイト」とBBS、Chatなどを通じたオンラインコミュニケーションを中心とした「コミュニティ系サイト」の2つに大きく分かれてました。
情報系サイトは、今でいうと「キュレーションサイト」に近いと言えます。
自分がやってたのは前者だったのですが、この手の作成者の人達はサイトの「質」にこだわってた人が多かったように思います。

対象アーティストの公式サイトがまだ十分あるとは言えなかった時代。
情報源は自分で本を買ったり立ち読みしたり、またCDショップの店長の方(当時の私のトラフィック範囲では2名いらっしゃいました)のサイトを訪問して新譜情報の提供をいただいたり(もちろんその度にBBSに一言断りの連絡を入れた)、レコード会社の社員の方がいつの間にかリピーターになっていて、メールやBBSで情報提供いただいたり・・・と、今思うとかなり手の込んだキュレーションスキームが確立されていたように思います。

宇多田ヒカルのデビューシングル発売直前に、東芝EMIの社員の方が「彼女聞いたらSPEEDなんか吹っ飛ぶ」と私の個人HPのBBSに書き込んできて当時の私が激怒したのは今でも覚えていますw
(まあ実際吹っ飛んだので間違いじゃなかったけど)

余談はさておき、それらの情報を提供する際、当時の私は必ず以下2つのことをしていました。

(1)出典元の明記
(2)ただのネタ紹介にとどまらず、「自分の言葉」を添えること

(1)は何の疑いもなく普通にやってました。出典元がどこだか分からない情報は「怪文書」にしかならないし、出典元不明の記事ばかりになるとサイトの信頼性が落ち、ひいては私自身が「信頼できない人」になります。
(2)は個人サイトを始めた動機が「自分の興味のあることについて、自分はこう思っているということを発信したい」というものだったので、単なる二次情報の羅列ではその動機を叶えられなかったからです。一部の人には目の痛いことも平気で書いてたので、2ch邦楽板で「文句ばっかり言ってる」と叩かれたこともありましたが、芸風は確立できてたと思いますw

で、それらの個人サイトにとって、最大のKPIは「アクセスカウンター」でした。ページビューに近いですね。トップページに設置されたカウンターがどれだけ回るかを皆気にしていました。その次が「BBSへの書き込でみ」です。

カウンターが回るということはそれだけ多くの人が来るということであり、その分トラブルに巻き込まれるリスクも上がりますし、実際新聞沙汰レベルの詐欺事件に巻き込まれたこともあります。
しかし、「これだけの人に来てもらっている」という思いが、何よりモチベーションになってました。

しかし、2004年初頭に某歌手ファンサイト側で対象人物に興味を失ってしまう出来事が起きたことをきっかけに、2004年春以降、急速に私の個人サイト活動はシュリンクし、今ではこの跡地ブログが残っているだけになっています。このトップページのカウンタは10万超えてるけど、実は1996年からの累計です。1日平均20ないんですよ。。

また、この頃から、個人サイトの閉鎖が相次ぐようになりました。
「公式サイト」が充実してきたので、個人が趣味でやっている情報系サイトの需要がなくなってきたことと、トラブル等に疲れてサイト維持をやめてしまった人が相次いだこと、またmixiの登場やブログサービスの普及で、維持管理に手間(心理面含む)とコストがかかる「個人サイト」という形以外のWeb発信スキームが確立されたことなどが、個人サイト衰退に繋がったと考えられます。

それとほぼ時を同じくして、Googleがシェアを伸ばしてきました。
YahooはパフォーマンスでGoogleに勝てなかったことなどが原因でシェアを落とし続け、ついに2010年にはYahooはGoogleの検索エンジンアルゴリズムを採用するという「登録制の廃止」に踏み切りました。

検索エンジンの検索結果の品質や、サイトのアクセス数が、Googleのアルゴリズムただ1つに委ねられる時代の到来です。

そして2016年。
WebはSNSと「キュレーションサイト」に占拠されるようになり、ハンコで押したような低品質なキュレーションサイト(まとめサイト)ばかり検索でヒットするようになってました。
夏頃になると、医療系のGoogle検索で、とある会社が運営しているキュレーションサイトの怪しい記事ばかりが検索結果の上に来るようになり、医療業界で問題視されるようになりました。

前置きが長くなりました。
これから本題の「キュレーション騒動」に関する内容です。

12/10に行われた、緊急開催!webメディアにおけるSEOと著作権 ー 各社の対応とこれからのwebメディア(Smips・エンタメと知財分科会 第8回)というイベントに行ってきました。
DeNAキュレーション騒動の火付け役となった、永江一石氏の講演です。

   
・・・で、レポートを一度書いていたら、ブラウザが落ちて2時間分の苦労がパー!
やる気なくしていたら、講演内容がアップされていたので、講演内容はこちらを参照してください。
 ⇒SMIPS永江一石さん講演「パクキュレ問題の本当の被害者とその解決のために」
 (2016/12/12追記:永江さんご本人が上記レポートを添削して別途アップされましたのでそちらにリンクを切り替えてます)

以下、上記レポートページをベースに、個々の雑感を書きます。

【1.Web業界の著作権・知的所有権に対する認識欠如について】

永江さんは「中国人と同じ」というきつい言い方をされてました。中国人は「中国の知的財産権問題」というWikipedia記事が作られるほど著作権・知的所有権(財産権)の概念が欠落してますが、Web業界の経営トップや、スタートアップ界隈の人達もこういう状態だと話されてました。
だから、モラルに訴えてもまーったく響かない。
だから、12/1のDeNAのプレスリリースで「私自身、モラルに反していないという考えを持つことができませんでした。」という「私には著作権・知的所有権という概念がありませんでした」と同等のフレーズを一部上場会社の社長が平気で言えてしまう。

これは教育の問題になるんだろうなあ。

【2.Web業界のビジネス意識について】

ああいう手法をやっていたDeNAが実は一番採算ラインに近く、「どこも赤字」なのが実態ですが、それでもキュレーション事業に走ってしまうのはなぜか。
その理由として、以下が挙げられてました。

 (1)雇用の確保
  →ソシャゲが斜陽な中でも雇用は確保しないといけない。
   その手段の1つとしてキュレーション事業があった。
   なんか本末転倒な話ですね。

 (2)PV数が多いと出世できる
 →PV数がWeb業界における出世のためのKPIになっているとのこと。
   収益は出ないけどこれだけの顧客がいるんですよ、ってことに
   なるからかな。

 (3)PV数が多いと投資家に評価してもらえる
   iemo・MERYが50億で買収されたことが、「キュレーションは儲かる」
   という風潮に拍車をかけたとのこと。
   経常的な利益は出せないけど、売却益は数十億単位。
   VCによるデューデリジェンスもPV数しか見ない。
   これがモラル崩壊に拍車をかけたとのこと。

PV数がKPIになるというのは先述の通り個人サイト全盛の頃からあった話ですが、そのノリがWebビジネスに悪い形で伝播してしまった形と言えるのかなあ・・・。

【3.何が問題だったのか?】
今回の「パクリライト」が問題だと思わない人挙手、と永江さんが会場に振った時に数名の方が手を挙げていました。
この時点で私は相当驚いたのですが、その方に永江さんはこう説明されていました。

『村上春樹の小説を主人公名と文脈だけ変えて中身は一緒の物を出版したらダメでしょ?』

手を挙げられた方はこの説明で納得されていました。

ただ、今回の主犯の一部となった「パクリライター」の人達(メインが女子大生インターンや主婦層)にはこれでも響かないかもしれません。なぜなら、彼女(彼)らの大半は村上春樹になろうとは思っていないだろうから。
また、MERYの客層にも著作権に関する意識が相当薄い人達がいて、こういう悩みをツイートされていた方もいます。

また、「低質キュレーション作成は働きやすい仕事なんだから奪わないで!」と言ってはてブでボコボコにされた人もいます。

だから、「小保方と同じです」と言ったほうがより響くんじゃないかなあ。女性層から相当なヘイトを買った「パクリ問題児」と同列に扱われても問題ないと思う人はそうそういないでしょう。
もしくは、自分自身が好きなタレントやアーティストの作品をパクられるのと同じだよ、と教えること。

これでも理解できないような人とは、正直縁を切るべきでしょう。住んでる世界が違いすぎます。

【4.DeNAのターゲット層は「情弱女性」?】

DeNAはオークションやソシャゲ時代からの伝統として「主婦層がお得意様」というものがあったそうです。
これは物凄く意外でした。ソシャゲ廃人のオタク♂層ではなかったのですね。

時間だけはある主婦層は、交友範囲が狭いか同質グループ(マイルドヤンキーなど)内の付き合いしかなく、スマホを結構使うが、その使い道はネットよりもゲームやアプリがほとんど。SNSの仕組みなんか知らない。そういう「情弱層」が古くからのDeNAのターゲットで、今回のキュレーション事業もそこをターゲットにしていたと永江氏は語ってました。

ただ、「MERY」は主婦層がメインとは言い難く、「女性全般」がターゲットと言える状態です。正直ちょっと説明不足感があった。でも「情弱」という意味では共通しているかな。
ツイッターを「MERY 見れない」で検索すると、「見れなくなって困る!早く復活させてよ!」という類のツイートが相当数ひっかかります。そう叫んでいるのは主婦だけではなく、女子高生・女子大生・社会人女性など様々な人たちです。彼女らはMERYがなんで見れなくなったのかを今日時点で理解できていないので、「情弱」の条件を立派に満たしています。

ですので、DeNAの今のターゲットは「情弱主婦」ではなく、「情弱女性」と言ったほうが適切ではないかな?と個人的には思います。(私個人の感想です。永江さんは「主婦」に限定されてました)

そいえば、ベイスターズも「ハマっ娘」という単語を普及させようとしたあたり、同じ層をターゲットにしてるんですかねえ?

【5.悪質キュレーションメディアを潰すにはどうすれば良いか?】

永江さんは2つ挙げられてましたが、どれも実効性には疑問です。

(1)メディアに広告を出してるスポンサー企業への通報
確かに今の時点ではスポンサーへの通報が一番効くらしく、DeNAの問い合わせフォームには「個々の企業様ではなく、上記フォームよりご連絡をお願いいたします」と注意書きが書かれています。

ただ、永江さんが気にされていた「長期実効性」という意味ではどうでしょう?
広告を引き揚げさせたということで一瞬の留飲は下がるでしょうが、それ以外通報者にインセンティブがありません。
数社広告を引き揚げさせたところで、Web検索がキュレーションメディアに汚染されてる状態は変わりませんし、また通報行為に対する苦言を呈する層も出てくるでしょう。「まだキュレーションメディアのパクリ監視で神経すり減らしてるの?」という挑発エントリを仕掛けてくる人が出てくることが容易に想像できます。

持って1~2か月くらいの対策かなあと思います。

(2)啓蒙によるリテラシー向上

(1)の対策で大手はつぶれるものの、より邪悪な中小メディアが生き残ってしまうことへの対策として、永江さんは消費者庁とかが音頭を取って啓蒙活動すべきと言ってましたが・・・

はっきり言います。無駄です。

コンシューマをリテラシー教育することができるのなら、20年前からある「チェーンメール」問題からずっとくすぶっている「デマ拡散問題」はとうの昔に無くなってるはずです。チェーンメールに引っかかる人はずっとひっかかり続ける確率が高いのが実態です。また、3.11以来デマ耐性が弱くなりっぱなしで回復しない日本人の多くは、今は「信じたい情報しか信じない」心理状態に陥っています。耳の痛い啓蒙をしても何も聞かなかったことにされるだけです。

ただ、小学生の頃からリテラシー教育するように文科省が動けば、50年後くらいには効果が出る可能性があります。リテラシー教育されてない人がみんなあの世に行ってネット上に出てこなくなるから。

【6.では、どうすれば良いのか?(私見)】

この節は完全私の私見です。永江さんの意見ではありませんのでご了承ください。

私は、『検索エンジンを昔の登録制に戻す』ことを提唱します。
サイト作成者が検索エンジン側に登録申請して、審査を通ったサイトだけが検索エンジンに登録され、検索可能となっていた、あの時代に戻すこと!

今回のキュレーション問題について、Google側は「問題の認識はしているものの、対策については匙を投げている」状態と永江さんは言ってましたが、そのGoogleが持ってるアルゴリズムなら「ボリューム」を中心とした審査はできるはずなので、これで一次審査はできます。
それを通ったサイトは二次審査に回され、目検でどこかで見たようなパクリがないかどうかを見ます。
単なるブログサイトは登録対象外とし、テーマを持った情報系サイトを登録の中心に据えることで、登録数が過剰になることを防ぐとともに、検索エンジンとしての品質確保も図ります。
さらに、1サイトが検索エンジンに登録できる数も大きく制限(せいぜい3件まで)し、同一サイトの記事が検索エンジンの検索結果を何ページも占拠するような事態を防ぎます。

私は講演の最後の質問タイムで、鼻づまり声で「昔のように登録制に戻してはどうか」と永江さんに質問したところ、「そういってる人は結構いる」との返答をいただきました。この話はここで終わりましたが・・・
人手も負荷もかかるでしょうが、今なら検索エンジンのアルゴリズムのメンテナンスに追われる状態と比べても意外と割高にならないかもしれません。見積もってないけど。
実行する上では、「掲載基準の選定」と、「掲載順をどう定めるか」というのが実現する上での最大の課題になると思います。

【7.その他】

(1)「楽天」の薬機法対策について
今回の騒動でなぜか無傷の楽天。その理由は、

「自社のECサイトでは薬機法違反になる誇大広告を書かせずに、外部のアフィリエイトサイトに書かせているので、摘発対象にならない」

とのこと。ただ永江氏はこの仕組みも東京都に通報しており、東京都も問題として認識しているはずとのこと。
なお、薬機法違反については厚労省より東京都のほうが厳しいとのこと。

(2)レガシーメディアにおけるパクリ
質問タイムで、紙などのレガシーメディアも昔から結構パクリをやっているという突っ込みがありました。
しかし、レガシーメディアとネットメディアの違いとして、

 レガシーメディア:パクリは「恥」である。それはみんな知っている
 ネットメディア:恥ともなんとも思っていない

こういう違いがあります、という話になってました。

(3)ビジネスを立ち上げる際の心がけについて

「自分だけが儲かって、相手にメリットがないビジネスをやってはダメ」だと強く言われました。
DeNAなどのキュレーション事業は、この点がまるっと欠落していると厳しく永江さんは断罪。

今までのDeNAは新規事業のパイオニアみたいな存在で、かつUI/UXと言った「顧客志向アプローチ」を先頭で推進していってる会社であると、ほんの少し前まで思ってました。

思ってました!

ですが実態はこれ。「パクリ志向アプローチ」と言い換えたほうがいいでしょう。
最近は、「DeNA DESIGN BLOG」とかのD社の公式情報発信サイトが全てクソサイトに見えるようになりました。


総評としては、一部自分の考えと違ったり、それってちょっと違うんじゃないかと思うところはあったけど、まあ個人の考えですし、これだけの話を無料で90分聞かせてくれただけで非常に価値のあるものでした。

今回の問題を起こした主犯格の村田マリ氏は、もともとWeb1.0時代にビジュアル系の音楽ポータルサイトを個人で立ち上げ、それが当たったことをきっかけにWeb業界に就職して今に至る方です。
当時の私の守備範囲に入っていなかったのでどのサイトかは知りませんが、個人のWebにおける出発点が私と近かったのは確かです。
でもこの人は、アクセス数の伸びや、BBS/Chatの盛り上がりだけでは満足できなかった。モチベーションをカネに求めてしまった。

2000年前後でも、この手のタイプの人はたまーに居ました。
アクセス数をカネに変換しようと、ファンサイトの対象歌手にちなんだオリジナルグッズを勝手に作って儲けようとしていた人を見たことがあります。相当叩かれましたが。
それがスケールアップし、著作権や知的所有権とかのモラルもどこかに飛んで行って(もしくは、始めから保有していなかった)、ああなってしまったのが村田マリ氏であると。

今回のキュレーション問題を機に、企業が主導していた個人向けWebコンテンツの世界はいろいろ変わってくるとみています。
もしかしたら、2020年あたりには、また「個人サイト復活」が起きるかもしれません。
企業がかかわるコンテンツへの信頼がなくなり、代わりに個人のサイトが隆盛する、あの頃への回帰です。

以上、ものすごおおおおお(中略)おおく長くなりましたが、レポートを終わりにします。
長い文章をここまで読んでくださりありがとうございました。


※余談
名刺を忘れてしまい、最後の名刺交換イベントに参加できなかったのが心残り・・・。
 
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